ドラマについて未視聴でしたが、Dr.コトー診療所を見てきました( 原作はかじっていました)。印象深かったシーンの感想を書きます。
・剛洋にコトー先生が言葉をかけるシーン
成績低下で奨学金がもらえず、休学したが復学できないまま医学部を中退したという現状について、人に相談できないまま状況が悪化している様子は、さながら真綿で首を絞められているかのような絶望感があります。医療事務の職の中で人の死を目の当たりにし、ショックのまま島へ帰るも、結局自分から現状について言い出せなかったところにも同じ絶望感を感じました。
そのような剛洋にコトー先生は、「医者じゃないから助けられなかったと思ったなら、君は医者にならなくてよかったよ」と声をかけます。声を荒げるでもなく、淡々と出てくる言葉としてあまりにも重い言葉だと感じました。ただ、無意味に慰めるでもなくこのように声をかけることができるのは、厳しいように見えて正しいのではないかと思いました。
なお、原作1巻でコトー先生は「ぼくは人を生かすために医者になったんだ。目の前で死んでいく人を、黙って見てるくらいなら、今すぐ医者をやめるよ!!」と言っており、正にこのシーンと対照的だな、と思いました。
・コトー先生が倒れるシーン
人が倒れているのに島民が棒立ちで、病人に対してもっと頑張ってくれ、と言葉をかけることがあるかはさておき…医者という職業は代わりがきかず、医者でない人間が命に対していかに無力か、ということが如実に表れていたシーンだと感じました。医学の心得がない人間は、あのシーンで棒立ちにはならないまでもおろおろするのが関の山ではないでしょうか。このシーンでも、医者とそれ以外の人との対比が印象的でした。
・ラストシーン
ハッピーエンドなのか、死の間際に見た幸せな理想の世界なのかは分かりませんでしたが、物語としてはハッピーエンドであってほしいです。
離島医療がテーマの作品ですが、医者とそれ以外の人との住む世界の差も感じました。コロナ禍において戦場のような職場で戦っている医療関係者に感謝を深めるとともに、そのような私は正に、棒立ちしていた島民と同じなのではないか、と感じずにはいられません。